ジムへ行くと、トレーニングベルトやパワーグリップ、リストラップなど、さまざまなギアを使用している人を見かけます。
高重量を扱うトレーニーほど使用率は高く、「ギアを使った方が効果が出る」というイメージを持っている方も多いかもしれません。
しかし、人間の身体は本来ギアを装着することを前提に作られていません。
では、なぜギアが必要になるのでしょうか。
今回はトレーニング効果ではなく、人間の身体機能という視点からトレーニングギアの必要性について考えていきます。
1. 人間は本来、自分の身体だけで力を発揮するようにできている

重い物を持ち上げようとすると自然とお腹に力が入り、体幹を安定させるために腹圧が高まります。
また、手で物を握ると前腕や肩周囲の筋肉が連動し、力が逃げないように身体全体が協調して働きます。
これは脳と神経系が無意識のうちに行っている防御反応であり、身体を守りながら効率的に力を発揮するための機能です。
つまり本来の人間は、ベルトやグリップがなくても身体を安定させながら動作できる能力を持っています。
2. ギアに頼りすぎると失われる能力もある

例えばトレーニングベルトです。
ベルトを巻くことで腹圧を高めやすくなりますが、自分自身で腹圧を作る能力が十分でない状態で依存してしまうと、体幹の安定性を筋肉や神経系で獲得する機会が減ってしまいます。
また、パワーグリップを常に使用している場合は握力や前腕の活動量が減少し、身体全体で負荷を支える能力が低下することもあります。
人間の身体は使わない機能を効率よく省こうとする性質があります。
便利な道具に頼りすぎることで、本来備わっている能力を発揮する機会が失われてしまうこともあるのです。
3. それでもギアが存在する理由

それは現代のトレーニングが人間本来の活動レベルを大きく超えているからです。
野生環境で生活していた時代、人間は数百キロのバーベルを担ぐことはありませんでした。
ベンチプレスで体重以上の重量を持ち上げることもありません。
しかし現代の筋力トレーニングでは、身体が日常的に経験しないレベルの負荷を意図的に与えます。
このような環境では、本来の機能だけでは対応しきれない場面が出てきます。
ギアは身体機能を補うためではなく、身体能力の限界をさらに押し広げるために生まれたものなのです。
4. 機能改善が目的ならギアは最小限でも良い

むしろ自分自身の筋力や安定性を使ってトレーニングを行うことで、身体本来の能力を高めることができます。
腹圧を自力で作る。
手でしっかり握る。
足で地面を踏む。
こうした基本的な身体操作能力は、ギアに頼らない環境の方が身につきやすい場合があります。
機能改善や健康づくりを目的とする方であれば、まずは自分の身体を上手く使うことを優先するべきでしょう。
5. 筋肥大や高重量トレーニングでは話が変わる

筋肉を大きくしたい場合、重要なのは身体機能を鍛えることだけではなく、対象筋へどれだけ強い刺激を与えられるかです。
例えば背中を鍛えたいのに握力が先に限界を迎えてしまうのであれば、パワーグリップを使った方が効率的です。
高重量スクワットで腰部への負担が大きいのであれば、ベルトを使用することでより安全にトレーニングできる可能性があります。
この場合のギアは機能を補うためではなく、トレーニングの目的を達成するための戦略として活用されます。
6.まとめ
そのため健康づくりや機能改善を目的とするのであれば、まずは自分の身体をコントロールする能力を高めることが重要です。
しかし現代の筋力トレーニングは、人間が本来経験しないレベルの負荷を扱います。
そのような環境ではギアは身体機能を補う道具ではなく、パフォーマンスを最大化するためのツールになります。
大切なのは「ギアを使うか使わないか」ではありません。
自分の身体でできることを理解した上で、必要な場面だけギアを活用すること。
それが本来の身体機能を失わず、トレーニング効果も高める最も合理的な選択と言えるでしょう。